令和7年度イノベーション戦略策定事業 成果概要

使用済水処理用逆浸透(RO)膜の国際的カスケード利用に関する戦略策定

委託先団体:一般財団法人 造水促進センター

1.事業概要

 本事業は、日本国内の半導体工場などで性能低下前に交換・廃棄される年間数万本の使用済逆浸透(RO)膜を回収・洗浄し、中古膜(再生膜)として海外で再利用する「国際的カスケード利用」のビジネスモデル策定を目的としている 。

 具体的には、国内半導体メーカーから入手した使用済膜の洗浄回復性を検証するとともに、タイ王国の水処理現場での実証運転を通じて再生膜の有効性を確認した 。あわせて、再生膜の品質を担保するための国際標準(ISO)の策定や、需給ギャップを解消するためのストック体制、輸送コストの最小化など、社会実装に向けた戦略を構築した 。

2.事業の目的

2-1. 本テーマの背景・必要性

 RO膜市場では、日本メーカーが依然として世界シェアの約半分を占めているものの、近年は海外メーカーによる低価格膜の台頭が進み、競争は一段と激しさを増している。一方で、超純水用途に限らず、さまざまなユーザーから使用済みRO膜が排出されており、その総数は2025年には世界全体で200万本を超えると見込まれている。これらの中には性能が大きく低下した膜も含まれるが、一定の性能をまだ保持しているにもかかわらず廃棄されている膜も少なくない。

 こうした大量廃棄の現状は、環境負荷の増大だけでなく、資源の非効率な利用という観点からも大きな課題となっている。環境保護やサーキュラーエコノミーの推進が求められる中、使用済みRO膜のうち再利用可能なものを薬品洗浄によって再生し、新品同等の性能を必ずしも必要としない排水再利用などの用途へ再供給する取り組みは、廃棄物削減と資源循環を同時に実現する有効な手段となり得る。これにより、資源の有効活用、水処理コストの低減、そして市場全体の持続可能性向上が期待される。

2-2. 社会導入・事業化を狙う対象領域

  • 供給元: 日本国内の半導体製造工場(超純水工程から排出される質の高い使用済膜を対象)。
  • 需要先: タイ王国の水処理・排水再利用市場(季節的な水不足により工業用水グレードのニーズが高い領域)。

2-3. イノベーションの目指す姿

 「捨てられていた使用済膜」を「価値ある再生資源」へと変える中古膜市場の創出を目指す 。日本発の洗浄技術と国際標準化(ISO)を組み合わせることで、再生膜の客観的な品質グレードを提示し、ユーザーが安心して利用できる仕組みを構築する 。これにより、日本の水処理産業の新たな競争力を生み出し、世界の水不足緩和と環境負荷低減に貢献するグローバルな循環型ビジネスモデルを実現する 。

3.事業の内容(実施事項)

3-1. 市場・ユーザのニーズ・評価を捉えるための実施事項

日本国内における使用済RO膜の入手・洗浄可能性の検証:
 国内の半導体工場等から排出される使用済RO膜の提供を受け、その汚染実態を調査した。また、複数の洗浄薬剤を用いた比較試験により、アルカリ洗浄を中心とした最適洗浄手順を確立した。その結果、透過水量や脱塩率が回復し、再生膜として再利用可能な性能まで回復することを実証した。

3-2. 技術的な課題、機械システム構成・開発上の課題への対応、目標達成のための実施事項

タイ王国における中古RO膜の有効性検証:
 タイ王国の水処理現場において、洗浄によって再生したRO膜を用いた試験運転を1か月以上にわたり実施した。その結果、運転データおよび試験終了後の分解調査の双方から、再生膜の性能と耐久性に問題がないことを確認した。さらに、輸送費用や洗浄プロセスにかかるコストを詳細に検討し、新品膜と比較して十分な競争力を持つビジネスモデルであることを経済性の観点から評価した。

3-3. 社会導入・事業化に向けた実施事項

カスケード利用の社会実装に向けた戦略策定:
 造水促進センターが中心になって規格開発して2024年12月に発行された国際規格ISO 20466「再生RO膜のグレード分類」に基づき、再生膜の品質を客観的に評価するグレード分類の運用を検討した。また、輸出に関する法規制への対応、商社や物流企業を含むビジネスプレーヤーの役割分担を整理し、2030年までの市場定着に向けたアクションプランを策定した。

4.主要成果

4-1. 市場・ユーザのニーズ・評価

使用済RO膜の再生技術と品質管理手法の確立:
 国内半導体工場から排出された使用済膜に対し、アルカリ洗浄を中心とした最適手順を適用することで、膜性能(透過水量)を平均約1.6倍に回復させることに成功した。また、再生膜の性能を全数測定し、ISO20466規格に準拠した品質データとして提示する管理手法を確立したことで、中古膜の信頼性を担保する基盤を整えた。

4-2. 技術的な課題、機械システム構成・開発上の課題及び達成目標に対して得られた成果

海外実証運転による実用性と経済性の立証:
 タイ王国の現地ユーザーにおける1か月以上の連続運転を通じて、再生膜が実際の水処理現場で安定して稼働することを実証した。また、収集したデータに基づき、入手・輸送・洗浄・保管のトータルコストを算出した結果、新品膜に対して十分な価格競争力を持ち、ビジネスとして持続可能であることを確認した。

4-3. 社会導入・事業化に向けた課題へのアプローチ、普及戦略

商業ベースでの受注と社会実装への道筋:
 本事業で試験運転に協力してくれた現地ユーザーと信頼関係が構築され、事業の最終段階において再生膜の具体的な商業注文を受けるに至り、ビジネスの第一歩を実証した。併せて、法規制クリアや、商社・物流企業を含むサプライチェーンの構築、およびISO規格を活用した国際的な普及戦略を策定し、社会実装に向けた道筋を明確化した。

5.今後の展開(活動予定)

5-1. 狙う市場、経済性、普及に至るための環境整備

供給体制の安定化と拡大:
 排出元となる国内半導体メーカーとの連携を強化し、メンテナンス計画に合わせた安定的な膜の回収・ストック体制を構築する 。

品質グレード管理の定着:
 ISO規格に準拠した品質データ提示を標準化し、ユーザーが用途に合わせて最適な再生膜を選択できる「安心・信頼の市場」を定着させる 。

用途開拓と他地域への展開:
 現在の工業用水用途に加え、より高度な水質を求める用途への適用を目指し、長期運転データの蓄積を進める 。また、タイ王国での成功モデルを、同様の水不足課題を抱える他の東南アジア諸国へも展開していく。

5-2. 社会導入に向けた活動予定

 社会実装を加速させるため、実ビジネスを担う民間事業者と、公的立場から基盤整備を行う造水促進センターが連携し、以下の役割分担で活動を推進する。

– 民間事業者(膜メーカー・商社・エンジ等):事業運営、用途開発、市場開拓
– 造水促進センター:国際標準化の推進、普及啓発

6.お問い合わせ先

イノベーション戦略策定事業全般:(一財)機械システム振興協会

本事業の詳細:(一財)造水促進センター

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