イノベーション戦略策定事業の成果発表

令和4年6月16日

社会にインパクトを与えるイノベーション戦略を策定するため、一般財団法人機械システム振興協会では、平成26年度から、外部の関係組織の皆様とともに「イノベーション戦略策定事業」を進めてきました。
令和3年度においては、この事業の中で3つのプロジェクトについて、外部の団体とともに事業を実施しました。
これらの事業成果を広く社会に普及させるため、令和4年5月30日に、「イノベーション戦略策定事業令和3年度分 成果発表会」を、リモート方式にて開催しました。関係団体や一般参加者など42名が参加し、次の3テーマの成果発表を行いました。

テーマ・委託先団体議論の概要
ブロックチェーン技術による留学生を中心としたエシカル・アクティビティ証明に関する戦略策定
[協力団体](一社)ソフトウェア協会
[発表者] 太田垣博嗣(ネクストウェア(株) 営業副統轄)
[コメンテーター] 笹岡賢二郎((一社)ソフトウェア協会 専務理事)
・留学生へヒアリングしたところ、エシカル・アクティビティの記録について賛同を得たが、留学生には多様性がありエシカル・アクティビティよりも日本で働くためのアプリケーションが欲しいという意見があったところが、事業開始時の予想と違っていた。
・ブロックチェーン技術の他分野への応用の可能性について、訪日外国人の証明やワクチン接種履歴、地域振興における地域通貨、また改ざん防止の観点から登記の分野等が考えられる。
・ブロックチェーンデータ入力時の真実の証明は難しいが、認証者と証明者の役割を分離し、認証内容にクオリティを持たせることがポイントであると考える。具体的な運営コストについて、関係者が増えるほど一利用者あたりのコストが低くなるが、本件ではスモールスタートを検討している。
人間・ロボット間の相互作用を伴う「合業」に関する戦略策定
[協力団体](一財)製造科学技術センター
[発表者] 大隅久(中央大学 教授)
[コメンテーター] 阿部聡((一財)製造科学技術センター)
・人間に合わせてロボットが動くという概念は、これまで手つかずの状態で、長年の研究会での議論を経て、行き着いたのが合業の概念である。今回はシーズ調査、ニーズ調査を行い、研究者、Sler、ロボットメーカー、ユーザー等、合業ができれば便利だと思っている人たちとの議論を通して、これからまだ開発が必要だといった検討部分を見いだすことが出来た。
・合業は、全部の検討が終わってはじめて出来るというものではなく、進展具合によって適用範囲を拡げるなどして柔軟に利用、検討できるようにしていきたい。
・今後は、ロボット学会の学術講演活動を足がかりにして、製造科学技術センターとして、海外にも成果の発信が出来れば良いし、JST に応募して社会的課題を解決するための安全基準等の検討につなげていければ良いと考えている。
プレス加工におけるデジタルトランスフォーメーションに関する戦略策定
[協力団体](一財)素形材センター
[発表者] 楊明(東京都立大学 教授)
[コメンテーター] 板谷憲次((一財)素形材センター 副会長・専務理事)
・今回、実態調査により、プレス加工業界のデジタル化、DX 化がかなり遅れていることが分かった。
・プレス加工は中小企業も多く、製品の数も多いことから個々の製品に対応しなければならないなどの課題はあるが、DX 化をしなければ大変だという認識を持つことがまず重要である。
・アンケートなど協力いただいた日本金属プレス工業協会では今年度、既に人材育成の事業を準備し、実証を含めた組み込みシステムの開発の研修も考えている。素形材センターとしても同協会を支援し
ながらセンター独自で DX 関係の技術セミナー等を開催し、目に見える形のモデル事業の検討を考えている。