ペロブスカイト量子ドットフィルムを適用した工業用X線検査装置の市場開拓に関する戦略策定(令和8年度イノベーション戦略策定事業 計画概要)

委託先:(一財)光産業技術振興協会

1.事業概要

 本事業では、ペロブスカイト量子ドット(PeQDs)フィルムをシンチレータに適用した工業用X線検査装置の市場開拓戦略を策定する。
 特に、電子デバイスや半導体部品等の量産ライン用X線検査装置をターゲットとし、比較的低出力(100〜120 kV)X線環境下で、PeQDs搭載シンチレータの高い分解能10 lp/mm(line pairs per millimeter)による微小欠陥検出能力向上とともに、速い反応速度による検査画像スピード100 fps(frames per second)超の高速化を可能とする検査装置を対象とする。
 この装置の市場分析、および実用化のために残る課題とその解決策について明確化を行なう。

2.事業の目的

2-1. 背景・必要性

 次世代発光材料とされるペロブスカイト量子ドット(PeQDs)は、高い発光量子収率(PhotoLuminesence QuantumYield: PLQY)、狭い発光スペクトル、高い波長制御性、高速応答性、および低製造コスト等の優位性から、センサや波長変換フィルムなどの次世代光製品として注目されている。本提案のPeQDsフィルムはX線照射による発光を確認済みであり、基礎データも獲得している。
 また、ペロブスカイト材料は日本国内のみでサプライチェーン構築が可能であり、経済安全保障上の懸念が少なく、コスト競争力確保も期待できる。特に、電子デバイスや半導体部品の高精度非破壊検査用途で用いる小型X線検査装置(100〜120 kV)への適用により市場拡大が期待されるため、顧客要望の分析と事業戦略の検討が重要である。
 さらに本プロジェクトを通し、PeQDsフィルムの工業用X線検査装置に対する市場価値を明確化する。

2-2. 対象領域

 本事業は、小型デバイス用ライン検査装置を主対象とし、電子デバイス、半導体部品、実装基板等の製造工程における外観・内部欠陥の非破壊検査を対象に、高感度・高分解能・高速応答性を備えたPeQDsフィルムをシンチレータに適用したX線検査装置の戦略を検討する。

3.事業の内容(技術的、機械システム構成上の課題と実施事項)

3-1. 技術的な課題、機械システム構成・開発上の課題

 従来のシンチレータは、高感度化のための厚膜化に伴う光散乱による解像度低下や、応答速度の遅さに起因する高速撮像時の残像発生が課題となっている。これらの課題を踏まえ、以下の観点から具体的な検討を行う。
 [1] 微細化が進む電子部品・半導体の製品検査の高感度化・高分解能化
 [2] ライン検査の高速化

3-2. 課題への対応(実施事項と課題解決のアプローチ)

 本課題の解決にあたっては、X線応答特性に関する基礎データの取得および性能指標の定量評価を通じ、技術成立性を実証する観点から、以下の取り組みを実施する。
 [1] 組成データの取得と高分解能の検証
 [2] 対X線応答速度の定量化とSN比の評価

4.社会導入、事業化の戦略検討

4-1. 社会導入、事業化に向けた課題

 PeQDsフィルムをシンチレータに適用した工業用X線検査装置の社会導入および事業化にあたっては、解決すべき以下の課題が存在する。
 [1] 工業用X線検査装置に求められる詳細仕様の明確化
 [2] PeQDsフィルムのサプライチェーン構築
 [3] X線検査装置やシンチレータ関連業界およびユーザへの認知度向上
 [4] 知財・市場・標準化動向の分析と競争戦略の策定

4-2. 社会導入、事業化に向けた実施事項

 社会導入および事業化に向けては、要求仕様の明確化、サプライチェーン構築、認知度向上に加え、市場・標準化動向および知財分析を踏まえた戦略策定が重要となる。これらの観点から、以下の事項について検討を行う。

 [1] 工業用X線検査装置に求められる要求仕様と、想定する性能とのギャップを整理し、不足点や課題を明確化する。
 [2] 検査装置メーカーとサプライヤ(材料メーカ)の連携の構築に向けてサプライチェーンの課題を検討する。
 [3] 高感度・高分解能・高速な特性を定量比較すると共に、アピールすべき展示会等の調査を始めとする認知度向上手段を検討する。
 [4] 知財・市場・標準化の分析結果を基に、初期導入から本格展開までのロードマップを策定し、事業化戦略を立案する。

5.実施体制

戦略策定委員会委員長:八瀬 清志(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 名誉リサーチャー)
プロジェクトリーダー:増原 陽人(国立大学法人 山形大学 大学院理工学研究科/有機材料システムフロンティアセンター教授/副センター長)
プロジェクトマネージャー:杉立 厚志(一般財団法人光産業技術振興協会 開発部部長代理)

6.お問い合わせ先

イノベーション戦略策定事業全般:(一財)機械システム振興協会
URL: https://www.mssf.or.jp/

本事業の詳細:(一財)光産業技術振興協会
URL: https://oitda.or.jp/