1. 趣旨
新潟県燕市では約400年前に農家の副業として始まった和釘の生産をもとに1910年代から金属洋食器の生産がスタートした。その技術をベースに金属加工業が発展してきた歴史を持っており、金属加工業での進んだ分業体制が構築されている。
燕地域の金属加工産業の注目すべき取組として、以下の活動が挙げられる。
① 品質管理規格ISO9001の認証取得が大変であることから、現場管理を中心に抜粋した「TSO」規格を2011年から燕市外部認証として実施。
② 2016年には公益社団法人つばめいとが設立され、学生インターンの宿泊施設を整備。その後、2020年には株式会社つばめいとが設立された。同社では2020年、コロナ禍で展示会がなくなり、営業機会を失った燕の加工専業企業21社をまとめた金属加工マッチングサイト「FACTARIUM」を開設。
③ 2022年度から地方創生交付金を活用して共同受発注のプラットフォームであるSFTC(Smart Factory Tsubame Cloud)を燕市の補助事業として整備し、現在、運用中。
燕地域の中小金属加工企業に関しては、2022年度当協会のフォーラム事業において、企業が集積としてプラットフォーム作りに取り組み、デジタル化、DX化を目指している事例を取り上げ、この分野の専門家も集めて、いわゆる産地としての中小企業地域集積のデジタル化、DX化の方向性について議論を行った。
2022年度当協会のフォーラム事業の活動の結果、デジタル化、DX化のアクションプランとして、以下をとりまとめるに至った。
<アクションプラン> ※2022年度フォーラム事業報告書より抜粋
[1] 個別企業の対応
個別企業のレベルで、デジタル技術を活用していく。現場のニーズを踏まえて自から身の丈に合ったセルフメイドのIoTツールを構築すべき。
[2] 社内人材の育成
デジタル化に当たっては、人材が必要となるが、まず社内での人材育成から目指すべき。その勉強、研修に当たっては、地元自治体の協力のもと、大学、高専などの関係機関との連携を強化して対応すべき。
[3] 中小企業地域集積としての議論
中小企業地域集積として今後の市場環境(国内、国際)や労働環境、製造技術変革、デジタル化、DX化にどう対応していくべきか議論を行う。
[4] 中小企業地域集積としてのコンセンサス形成
デジタル化、DX化により競争力をつけることについて、中小企業地域集積としてのコンセンサスを形成する。
[5] DX化推進体制の確立
中小企業地域集積としてのDX化に取り組むための推進体制(組織、ヒト、資金)を確立する。
本年度のフォーラム活動では、中小企業地域集積のデジタル化、DX化の出発点となる上記のアクションプラン[1] の個別企業のデジタル化の現状と課題を掘り下げ、デジタル技術の課題と具体的な導入方策について、議論を行う。
2.課題・論点と本フォーラムにおける実施事項
(1) 課題・論点
【論点1】 データの見える化手法
【論点2】 技術の見える化手法
【論点3】 デジタル技術への親近感醸成手法
(参考1)企業のデジタル化の取組レベル(中小企業白書による整理)

(参考2)製造分野が対象とするデジタル化領域(情報処理推進機構(IPA)による整理)

(2) 実施事項
① 【論点1】に関して、ものづくり現場の業務の見える化、データの取り扱い等に係る課題を整理。
② 【論点2】に関して、熟練者の技術の見える化や技術伝承をどのように行うのか、外部人材の活用などについて検討。
③ 【論点3】に関して、管理側と現場とのコンセンサス形成、ツール活用など、デジタル技術への親近感醸成手法について討議。
④ 論点ごとの議論を踏まえ、グローバルでの競争力強化を目指す具体的なアクションプラン及びロードマップの策定、推進体制のあり方に関する検討を実施。
3.フォーラム委員
| 氏名 | 所属 | 役職 |
| [委員長] 片岡 晃 | デジタル・クロッシング・ラボ | 代表 |
| 阿部 貴之 | 株式会社阿部工業 | 代表取締役社長 |
| 石井 和人 | 独立行政法人中小企業基盤整備機構 関東本部 | 中小企業アドバイザー |
| 大関 貴資 | 燕市 産業振興部 商工振興課 | 参事 |
| 小長谷 義浩 | 独立行政法人 情報処理推進機構(IPA) デジタル基盤センター デジタルトランスフォーメーション部 地域プラットフォームグループ | グループリーダー |
| 齋藤 隆範 | 株式会社エステーリンク | 代表取締役 |
| 佐々木 靜 | 株式会社テクノア プラットフォーム事業部 プラットフォーム課 | 課長 |
| 山後 春信 | 株式会社つばめいと | 代表取締役 |
| 鈴木 康仁 | スワオメッキ有限会社 | 代表取締役社長 |
| 田野 存行 | 株式会社エキスパートギグ | 代表取締役 |
| 山田 繁 | 公益財団法人にいがた産業創造機構 産業創造グループデジタル化支援チーム | マネージャー |
| 湯川 高志 | 燕市DX推進ラボ | 会長 |
| 山田 宗範 | 一般財団法人機械システム振興協会 | 専務理事 |
| オブザーバ | ||
| 飯村 道 | 関東経済産業局 地域経済部 デジタル経済課 | 課長補佐 |
| 久冨木 達哉 | 独立行政法人 中小企業基盤整備機構 関東本部 企業支援部企業支援課 | 参事 |
4.第1回 開催概要
2025年10月14日 14:00-16:00 に第1回 燕地域中小金属加工企業のデジタル化フォーラム(委員長:片岡 晃 デジタル・クロッシング・ラボ 代表)を開催しました。
第1回フォーラムでは、燕地域の企業におけるデジタル化の課題について討議しました。
【 第1回フォーラム 参加者 】

