令和5年度イノベーション戦略策定事業 成果概要

メタバースを活用した就業・社会参加支援プラットフォームに関する戦略策定

委託先団体:一般社団法人 ソフトウェア協会 

目次

1.事業概要
2.事業の目的
  2-1. 本テーマの背景・必要性
  2-2. 社会導入・事業化を狙う対象領域
  2-3. イノベーションの目指す姿
3.事業の内容(実施事項)
  3-1. 市場・ユーザのニーズ・評価を捉えるための実施事項
  3-2. 技術的な課題、機械システム構成・開発上の課題への対応、目標達成のための実施事項
  3-3. 社会導入・事業化に向けた実施事項
4.主要成果
  4-1. 市場・ユーザのニーズ・評価
  4-2. 技術的な課題、機械システム構成・開発上の課題及び達成目標に対して得られた成果
  4-3. 社会導入・事業化に向けた課題へのアプローチ、普及戦略
5.今後の展開(活動予定) 
  5-1. 狙う市場、経済性、普及に至るための環境整備
  5-2. 社会導入に向けた活動予定
6.お問い合わせ先

1.事業概要

 ひきこもり当事者への就労支援を目的とする、ICT技術(メタバース、AIなど)を活用した就業・社会参加支援プラットフォームを構築することを目指し、開発すべきシステムの要件を明確化しました。本プラットフォームにより、少子高齢化に伴う労働力人口不足の問題や8050問題といった社会課題の解決に貢献できると期待されます。 

 就労に際してひきこもり当事者が直面するであろう障壁として、コミュニケーションの問題に注目しました。コミュニケーションが不得手であっても支障なく就労できるよう、AIによるメッセージ自動変換/音声自動変換システムなどを盛り込んだ就労支援プラットフォームを設計し、適切なユーザインターフェイスや運用にあたっての課題について検討を行いました。 

2.事業の目的

2-1. 本テーマの背景・必要性

 「8050問題」(高齢の親と働いていない独身の子が同居する世帯の問題)など、ひきこもりは喫緊の課題としてクローズアップされるが、その一方で、少子高齢化に伴う労働力人口の不足を解決する貴重な人材という観点からも注目が集まっています。 

 現在のひきこもり施策は人との直接的なコミュニケーションを基本としていますが、メタバースを活用した試験的な取り組みもいくつかの自治体では実施されており、今後の発展に期待が寄せられています。 

AIによるメタバース空間内でのコミュニケーションの最適化

2-2. 社会導入・事業化を狙う対象領域

 業務発注側のユーザ(企業など)と業務受注側のユーザ(ひきこもりユーザなど)の双方が対象となります。特に、業務受注側ユーザの層として「氷河期世代のひきこもり当事者」を中心的な対象としました。ただし、本プラットフォームの可能性としては、若年層ユーザへの拡張や、ひきこもりに限らない層への拡張(不登校ユーザへの適用、職場内でのコミュニケーション潤滑化を目的とした導入)も考えられます。 

2-3. イノベーションの目指す姿

 ひきこもり人口の就業・社会参加を促すような革新的なプラットフォームを構築、運用することができれば、8050問題(ひきこもり当事者への支援)、および労働力人口不足の問題を一挙に解決することができると期待されます。

3.事業の内容(実施事項)

3-1. 市場・ユーザのニーズ・評価を捉えるための実施事項

 ひきこもりに関係する支援団体やメタバース活用の取り組みを試行的に行っている自治体へヒアリングを実施。各団体・自治体の取り組みの実態を訊ねたほか、現状における課題を聞き出しました。さらに、本プラットフォームについての意見の聞き取りも行いました。 

3-2. 技術的な課題、機械システム構成・開発上の課題への対応、目標達成のための実施事項

 戦略策定員会を組織し、以下の点について検討しました。 

– 関係者からの意見の整理 
 ヒアリング結果等を踏まえ、適切なユーザインターフェイス構築に必要な要件を整理しました。 

セキュリティについて 
 メタバース空間におけるセキュリティリスクについて検討。運用にあたって留意すべき事項を洗い出しました。 

コミュニケーション最適化システムについて 
 AIによる自動変換技術など、コミュニケーションをサポートするシステムの適用可能性を確認しました。

 3-3. 社会導入・事業化に向けた実施事項

 ヒアリング結果から明らかになった課題(費用面の課題、運用面の課題)を総括し、それに対する対応策を検討しました。さらに、本事業終了後の展開(実証実験や実運用など)や、事業スキームについての計画を立てました。その際の協力体制や、助力を仰ぐべき事業者・団体・自治体の検討も行っています。 

4.主要成果

4-1. 市場・ユーザのニーズ・評価

 ヒアリングにより明らかになった課題は以下の通りです。これらを踏まえ、プラットフォームの設計や実運用の方向性を改善しました。 

人的リソースの問題 
 メタバースの活用に際してもスタッフが中に入って対応する必要があります。利用者の数をある程度に制限しなければなりません。スタッフの人件費も懸念されます。 

就労支援の難しさ 
 現状、いずれの団体・自治体においても、実際の就労までたどり着いた利用者はごくわずかでありました。少しずつ仕事に慣れるような、段階的な支援が必要であることが判明しました。 

4-2. 技術的な課題、機械システム構成・開発上の課題及び達成目標に対して得られた成果

関係者からの意見の整理 
 整理した要件を踏まえテストシステムを作成し、実際の使用感などを検証しました。 

– セキュリティ 
 セキュリティリスクについて一般的な配慮事項を整理したほか、本プラットフォームにおいて特に留意すべき問題(ストレスチェックなど体調に関わる個人情報データの取り扱い)を確認しました。 

– コミュニケーション最適化システム 
 AIによるメッセージ自動変換/音声自動変換の方針を決定しました(当事者を傷つけないような口調の設定、変換パターン個数の設定など)

4-3. 社会導入・事業化に向けた課題へのアプローチ、普及戦略

 費用面の課題に対しては、①補助金など公的な予算・財源へのアプローチ、②AIアバターの活用による人件費の削減(簡単な業務をAIアバターに代替させ、専門的な知識や技術を要するものに人的資源を割くことで業務の効率化を図る)の二点を主軸としました。また運用面については、継続的に安定したサービスの提供ができる体制の企業への委託が計画されました。

5.今後の展開(活動予定) 

5-1. 狙う市場、経済性、普及に至るための環境整備

 本プラットフォームの取り組みは先進的な事業であるため、既存の市場を狙うのではなく、新しい市場の創出を目指します。その際のユーザ確保については、ヒアリングにご協力いただいた団体・自治体の助力を得るところから始めます。企業側については、(一社)ソフトウェア協会所属の組織・企業を中心とした協力体制の構築を目指します。 

 また、本事業で得られた知見を元にセミナーや講演会を企画・開催するなど、普及に向けた活動も実施します。 

5-2. 社会導入に向けた活動予定

 本事業の成果を踏まえ、システム本開発、実証実験と実験結果のフィードバックを経て、実運用へ進むことを計画しています。 

 実証実験では、実システムにおけるAI運用を試行します。実験に協力いただいたひきこもり当事者からのフィードバックを受け、改善を重ねてシステムの精度向上を図ります。同時に、運用にかかわるノウハウの構築や新たな団体とのコラボレーションなど、プラットフォームの普及を目指した活動にも取り組んでいく予定です。 

6.お問い合わせ先

イノベーション戦略策定事業全般:(一財)機械システム振興協会
本事業の詳細:委託先団体:一般社団法人 ソフトウェア協会 
URL: https://www.saj.or.jp/

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