縫製工程の自動化に向けたCADデータ活用に関する戦略策定 (令和5年度 イノベーション戦略策定事業の計画概要)

委託先団体:一般社団法人 日本縫製機械工業会

1.事業概要

 本戦略策定事業は、国内縫製工場の特に自動化が遅れている縫製工程において、デジタルミシンがCADデータを共通に取り込める「共通フォーマット」を策定し、熟練オペレーターの技能代替を実現するものである。このため、熟練オペレーターによる縫製作業が必要な婦人服の「イセ込み縫製」(注)を対象に実証検証する。これにより、「共通フォーマット」を活かした生産方式の導入効果を検証し、その利便性や効果をアパレル企業、縫製工場に啓蒙普及することで業界としての認知を図る。
 (注) 長さの異なる2枚の平面的な生地を立体的に縫製する方法の一つ。

2.事業の目的

背景・必要性

 日本では、販売されるアパレル製品の97.9%が海外で生産されており(2019年度数量ベースの輸入浸透率)、①製造原価を下げるために大量の見込み生産を行い、②それにより大量の過剰在庫が発生し、③結果、大量の衣料品の廃棄を招く、というアパレル産業の抱える「廃棄物問題」の構造的な要因に結び付いている。
 その解決策としては、アパレル生産を国内に戻すことであるが、肝心の国内で生産する人材の確保、特に付加価値の高い衣料品を生産する技能を持ったオペレーターの確保が難しい状況となっており、このオペレーターの持つ技能を、技術で代替する必要がある。
 アパレル生産工程においては、CADとCAM(裁断機)間は共通したデータフォーマットが既に存在しているが、CADとミシンの間には、共通したデータフォーマットが存在しないため、縫製工程でCADデータが活用出来ていない。そのため現状の縫製工程では、紙の縫製仕様書による情報伝達と、熟練オペレーターの技能でそこを補っている。これを打破するには、CADにある設計情報と、縫製を行うデジタルミシンを繋げることによって、熟練オペレーターの技能に頼らない生産を行うしかない。

対象領域

 国内縫製工場における縫製工程を対象とする。効果確認は、日本のアパレル生産の中でも最も多くの販売額を占める婦人・子供服小売業(2020年経済構造実態調査(甲調査)によれば、販売額は4.3兆円)の中から婦人服とする。
 その縫製工程において高度なオペレーターの技能を必要とする「イセ込み縫製」を具体的な対象とし、そのデータの受け渡しに必要となる「共通フォーマット」の策定となる。

3.事業の内容(技術的、機械システム構成上の課題と実施事項)

技術的な課題、機械システム構成・開発上の課題

 CADからミシンへデータを取り込む「共通フォーマット」が存在しないので新規作成し、熟練オペレーターの技能に依存している婦人服縫製工場における「イセ込み工程」をデジタルミシンの制御データに代替する。そのため縫製精度と縫製作業時間の検証を行う。

課題への対応(実施事項と課題解決のアプローチ)

 「共通フォーマット」の必要項目の洗い出しを行い、設計を行う。熟練オペレーターのイセ込み縫製作業の調査、検証を行い、熟練オペレーターの素材コントロール技能を代替するデジタルミシンでの素材制御を確立し、婦人服縫製工場における「イセ込み工程」を検証する。

4.社会導入、事業化の戦略検討

社会導入、事業化に向けた課題

 CADデータを活かしたデジタルミシンの導入コスト、期待される効果を検証するため、デジタルミシンのコストダウンを検討し、期待される導入効果の見積もりを実施する。
 婦人服縫製工場における「イセ込み工程」のCADデータを活かしたデジタルミシンでの縫製技能代替の有効性を確認するとともに、「共通フォーマット」の有効性を明確にし、業界標準としての認知を図る。

社会導入、事業化に向けた実施事項

 「共通フォーマット」の有効性を明確にし、婦人服縫製工場における「イセ込み工程」の実証検証結果の有効性をモデル縫製工場で現場確認する。この結果に基づき、業界標準としての普及戦略を策定するため、業界関係者への有効性の認知を図る方策を検討する。

5.実施体制

プロジェクトリーダー:近藤 繁樹(日本アパレル工業技術研究会 会長)
プロジェクトマネージャー:湯原 孝志(一般社団法人日本縫製機械工業会 専務理事)
戦略策定委員会委員長:髙寺 政行(信州大学繊維学部先進繊維・感性工学科感性工学コース教授)                  

6.お問い合わせ先

イノベーション戦略策定事業全般:(一財)機械システム振興協会
URL: https://www.mssf.or.jp/
本事業の詳細:(一社)日本縫製機械工業会
URL: https://jasma.or.jp/