光無線給電の小型移動機器向けシステムの市場開拓に関する戦略策定
委託先団体:一般財団法人 光産業技術振興協会
事業の目的
1.本テーマの背景、必要性
走行中光無線給電システムを無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)等の小型移動機器に適用し、物流分野の自動化の進展と拡大に貢献する。特に今までとは異なり、送電側と受電側の技術・機能比重を変革することで、物流自動化システムの発展に加えバッテリー用希少資源の効率利用に資する。
2.社会導入・事業化を狙う対象領域
具体的には人の侵入のない倉庫内で少数光源により多数AGVが同時稼働するという物流倉庫用AGVをユースケースに想定し、ユーザヒアリングにより抽出した光無線給電(OWPT:Optical Wireless Power Transmission)型AGVへの要求仕様を明確にし、光無線給電システム構成を提案する。当該システム構成の主要な機能要素について試作を行い、基礎的な特性確認や課題把握など実現性を評価する。
3.イノベーションの目指す姿
資源制約など社会課題も含めた既存給電の課題に対応し、かつ送電/受電の技術・機能比重の役割変革をもたらす光無線給電の利便性に対する製造者・ユーザの幅広い認知を促し、新たな多様な物流分野のシステムを可能とする。
図1 光無線給電を用いた物流倉庫のイメージ
事業概要
1.市場・ユーザのニーズ・評価をとらえるための実施事項
AGV等のユーザや製造者(計8社)へヒアリングし、現状の給電方式の課題、光無線給電への期待や懸念を抽出し、システム構成や戦略構想の基本とした。
2.技術的な課題、機械システム構成・開発上の課題への対応、目標達成のための実施事項
これまでとは異なるシステム構成への転換に対し,ヒアリング結果と調査・試作に基づく技術状況とその今後の進展の想定からシステム構成や要求仕様を設定した。一方、現時点で実用に至っていない光無線給電に関して、調査・試作によりシステム構築に必要な高出力やビーム照射など主要な機能要素を評価することで、現時点の技術レベル、今後の技術進展の可能性、技術確立に必要な要件の抽出を行った。
3.社会導入・事業化に向けた実施事項
ロードマップ、市場予測、市場開拓戦略策定の枠組を検討した。
主要成果
1.市場・ユーザのニーズ・評価
現在のAGVのユーザや製造者にとって、現状と異なる給電方式やバッテリー搭載の改善は強い検討対象でないが、光無線給電方式という既存の給電と大きく異なる技術やその特徴を把握することで長時間稼働、充電時のトラブル・オーバーヘッド抑制などに強い期待を確認した。
一方、本方式には給電機会の制約、コスト、安全対策への懸念があったが、これら懸念への対策を明確化することで光無線給電型AGVは有力なユースケースになるため、戦略策定すべき対象と設定した。
2.技術的な課題、機械システム構成・開発上の課題及び達成目標に対して得られた成果
システム構成を検討し,給電技術特性や利用条件から小型・中型AGVの2つを主要な構成と設定し、1光源あたり4~10台のAGV台数により連続的稼働を可能にしながらバッテリー搭載量数10分の1の構成が可能と判断した。倉庫内で少数光源から多数AGVに給電する上で、光源側、受電側と独立した鏡を利用する転送系の準備と、これらを制御する給電マネージメントシステムが必要と指摘した。なお、給電機会の確保には、受電側構成や転送システムなどに本給電方式に特有の機構や制御が重要なことを指摘した。
一方、ビーム利用は人の侵入しない場所(倉庫)に限定し、必要なシステムコスト抑制はバッテリー削減効果により可能と評価し、懸念への対応が可能とした。なお、給電電力の検証では、目標レベル数100Wに対して、試作は数10Wのため今後10倍ほどの給電量増加のための方策が必要なこと、距離数10mの光照射目標精度1cmに対して距離数mにおける検証を行い、今後10倍ほどの精度実現方式が必要という知見を得た。
3.社会導入・事業化に向けた課題へのアプローチ、普及戦略
現状のAGVでは給電方式は製造者・ユーザの主要な選定基準となっていないが、資源利用や労働への効果等の社会課題解決の可能性、送電側と受電側の技術・機能の比重を変革することによる物流自動化システムの発展などの光無線給電の利便性に対する製造者・ユーザの幅広い認知が重要と判断した。
このため安全対策を含む技術の展開と社会の進展を評価し、光無線給電方式は、バッテリーの高コスト対策に加え、利用資源抑制、人の知的労働へのシフト促進などSDGsの観点と、送電/受電の技術・役割変革へと導けると結論づけた。
図2 AGVと光無線給電(OWPT)のロードマップ
今後の展開
本事業をもとに公的資金研究開発プロジェクトへ提案し、コンソーシアム的機能の構築、技術・市場の情報収集と提供、分野活性化、協業による機能試作・開発を目的とするプロジェクト獲得を目指す。
問い合わせ先
イノベーション戦略策定事業全般:(一財)機械システム振興協会
本事業の詳細:(一財)光産業技術振興協会
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